BtoB企業のマーケティング担当にとって、「展示会出展」は大きなタスクの一つです。
今回は自社で展示会を成功させたノウハウをもとに、展示会で成果を挙げる具体的なコツについて、お話しします。
展示会は効果があるのか?
毎年展示会に出展している企業はともかく、初めて出展する際に突き付けられるのがこのテーマです。
なにより、展示会出展には費用がかかります。
規模にもよりますが最低でもウン10万から、100万~、大きなものでは千万単位のコストがかかります。
そして、社員のリソースも、かなりかかります。
3日間ブースに立つ社員はもちろん、各種コンテンツの制作、手配、
そして搬入や後片付けなども(コスト度外視して業者に依頼すれば別ですが)、相応の負荷がかかります。
通常業務が忙しい中、そこまでして・・・Web全盛の世の中で展示会なんて・・・という意見ももちろんありますが、
結果から言えばBtoB企業にとって展示会はまだまだ効果アリ、と思います。
日本でバーチャル展示会が定着しなかった理由
かつて、2009年頃ですか、グローバル企業を中心に展示会場での展示会開催の手間とコストに懐疑的な見方があり、
Webを活用した「バーチャル展示会」ブームが巻き起こった事がありました。
アバターを作り、文字通りバーチャルな展示会場にWebで参加し、
オンデマンドで好きな時に好きな場所からデモや講演ビデオが観られる、資料がダウンロードできる、というものです。
正確な訪問者データが把握できる、物理的に来られない見込み顧客にも有効、と主流になるかと思われましたが・・・
実際にはまるで定着せず、あっという間に廃れてしまいました。
実施した企業のマーケティング担当者に撤退した理由を聞いてみたのですが、
- リアル展示会開催と変わらないどころかWebサイトを作り込みするとそれ以上にコストがかかる
- 「いつでも見られる」ことで逆に誰も来ない、集客がうまくいかない
といったところでした。
私は、本質的にこのWebでのバーチャル展示会が定着されない理由は、
「リアルにその場所に出向く」という事が、展示会来場者のモチベーションであるのではないかと思います。
国土が広く国内移動に何時間もかかるアメリカなどと違い、日本国内であれば2~3時間もあれば大抵の場所へ行けます。
そして、なにかと多忙なビジネスマンは、「この日は展示会に行くのだ」という、
スケジュールを確保しているのでその場所に来られるのであって、
「スキマ時間で見てください」と言われても、忙しい人ほど誰も見ないのですね。
これから先、働き方改革が進展して、場所にとらわれない働き方が定着していったり、
Webの技術がさらに進展すれば普及する可能性はありますが、
やはりリアル展示会はベタだが有効、というのを印象付けた出来事でした。
展示会に出展する効果
それでは、展示会に出展する効果、メリットは?というと
①新規の顧客獲得
なんといっても最大の成果はコレです。
そのためには「展示」会にせず、「展示商談」会、と考えることがポイントです。
実際、直近でニーズがあるお客様はとりあえず資料もらって満足、ではなく、
できればその場である程度詳しい、突っ込んだ話が聞きたい、というモチベーションで来場されます。
しっかり案内してヒアリングして、後日訪問につなげれば、確実に新規商談は確保可能です。
②コンテンツの整備
展示会に出展するにあたって、
- Webサイト
- アタックリーフ
- 説明用パネル
- パンフレット
- デモビデオ
- スクリーンバナー
- 手提げ袋
といった各種コンテンツを整備しましょう。
普段、多忙や予算確保できない、と後回しにしていたものを実施する、展示会はまたとないチャンスです。
「展示会出展」という明確な目的があると、
- 説明、商談に何が必要なのか?
- 本番に間に合わせないとならない、という意識
があることで、整備がものすごく加速します。
また、その後も年に一度、展示会前のコンテンツ改訂を恒例行事化することがポイントです。
③同業他社のサービスを知る
周囲には同業、競合のブースやさまざまな類似展示会が併設されています。
いろいろと情報を得たり、情報交換もできます。
この場をきっかけに協業の話が進んだり、といったこともメリットの一つです。
④社員の教育研修
自社で実施した際、最も効果があったのがコレでした。
展示会は疲れます。熱いし寒いし立ちっぱなしだし人は多いし・・・
なので社員に負荷をかけてしまうのでは、という危惧もありますが、ベテランから若手社員を幅広く参加してもらいましょう。
そして当日、お客様と対峙してきちんと受け答えしてもらうために
(詳しい事は先輩に繋ぐ役割の新人とはいっても)、
ある程度の基礎知識は身に着けてもらう必要があります。
- 我々は誰に対して何を提供していて、
- 来場される方々は何に興味・関心があり、
- 市場としてはどういう状況なのか
などを事前に勉強会を開催、共有して、社員教育の機会と考えましょう。
「なんとなくわかった気でいた」中堅社員にとっても、再整理の場になります。
コレは営業スタッフにマーケティング的な考え方を共有できる、またとない機会です。
展示会きっかけで始めたこと、得られたこと
MA(マーケティングオートメーション)ツールを導入・活用
展示会開催はMAツール導入の機会にもなります。
- ご案内メール配信や開催後のお礼メール配信
- それらの開封率とWebサイトへの回帰率の把握
- どのサービスのコンテンツに興味・関心があるかを確認してのその後のアクション
これらを手作業で実行しようとすると、リソ-ス的にも、スピード的にも大変です。
その際にMAツールを活用すれば、効率的な把握が可能です。
*MAツールについては、別枠で詳しく解説します。
展示会運用の具体的ノウハウを保有
初回はコストがかかりますが、自前に拘らず、展示会専門企業にサポートを依頼することをおススメします。
- ブース内でのフォーメーション
- トークスクリプト整備
- 準備、事後マニュアル整備
- 当日のヒアリングシートや搬入する際のチェックリスト作成
- 獲得名刺のデジタル化や各種メール文面など開催前~開催後のフロー
など、一連の流れを把握、体験できるため、非常に大きな知見となります。
展示会出展はいいことばかり?デメリットは?
開催前の準備、営業スタッフも開催中はもちろん、
開催後の訪問ラッシュで負荷がかかる、平たく言うととにかく疲れる、忙しい!(笑)
という点はもちろん否めません。
しかし、開催後に「いつ来てくれるの?」「早く来てよ」と催促までいただいた上での、
具体的かつ確度の高いアポイントと訪問は、
普段ガチャ切に疲弊している営業スタッフからするとモチベーションにつながります。
展示会を成功させるコツ
ざっくりまとめると、
- 展示会出展を、マーケティングなど閉じた部署単位ではなく、全社を挙げてのイベント化すること
- 名刺獲得数だけでなく、展示会契機の受注(粗利)金額目標を明確にすること
- この機会を逃さず、コンテンツを整備すること
- フォローにMAツールを活用してナーチャリングすること
- ブースでは「展示」ではなく「展示&商談」会にすること
- 対応した来場者の名刺だけでなく興味関心、導入時期などを見極め、記録してアタックすること
などが挙げられます。
Webなどで情報が飽和状態にある現代で、なぜわざわざ時間をかけて来場されるのか、を考えれば、
来場者の中には「情報収集」ではなく「直近のニーズについて詳しく突っ込んだところを直接聞いてみたい」という方が必ずいます。(もちろん単なる情報収集レベルの人もたくさんいますが)
その際に、単に資料をバラまくコンパニオンだけでは見極めができず、もったいなさ過ぎます。
大変ではありますが全社の協力を仰いで、ベテランから若手まで、
そしてできるだけ営業スタッフを巻き込んで臨むこと、が非常に重要です。
いかがでしょうか。
これらはあくまでも私の経験からくる感覚値で、『もう展示会はそろそろいいかな・・・』という方も多いのではと思いますが、
- どんな展示会に出るのか
- 何を目的にするのか
- 費用対効果をどの程度でプランニングするのか
などを見直すことで、まだまだ有効な施策なように感じます。
状況は企業によってさまざまと思いますが、展示会出展を検討する場合の参考になれば幸いです。
コメント