■BtoB における「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」
マーケティング領域で ”まず最初に設定すべき” 、と登場するのが「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」です。
●「ペルソナ」とは:
自社の商材を購入する対象者を、性別や年齢、趣味嗜好などを徹底して具体化した「見込み顧客像」のこと
●「カスタマージャーニー」とは:
その見込み顧客像=ペルソナが、自社商材を見つけてから購入するまでの「顧客の購買プロセスを可視化したもの」です。
なにか戦略を立てる際に、「そもそも相手は誰なのか」がわからないと何も決められませんので、この必要性は皆さんお分かりのことだと思います。
しかし・・・BtoCでは基本のキ、当たり前のことなのに、BtoBにおいてはコレが非常に難しい、のです。
■BtoBで「ペルソナ」がイマイチ、腑に落ちない理由
BtoBにおいて、相手は一人ではありません。組織です。担当者が探して、上司が決裁して、経営層が稟議して、さらには購買部門が出てきて、契約には法務部門が・・・さらには購入する部門も情報システムだったり営業部だったり、総務部だったり・・・時には、担当者が途中で異動したり退職したりもします。
エンドユーザーへの直販ではなく、代理店や二次店と間接販売をしている企業では、状況はさらに複雑です。
それをたった一人の「ペルソナ」にするの?とモヤモヤします。実際、「ペルソナ」や「カスタマージャーニー」の重要性を解くサイトやセミナーで、例として挙げられるのは「旅行業界」「採用業界」・・・それってBtoCじゃないの?と感じた方は非常に多いのではないでしょうか。
■それでもBtoBで「ペルソナ」+「カスタマージャーニー」が必要な理由
しかし、「だからBtoBではペルソナとかなんとかジャーニーとかは要らないのだ」というのはあまりに思考停止です。逆に言えば、そこを曖昧なままにしているから、BtoBマーケティングはうまくいかない、とも言えるくらい、重要なポイントなのです。
市場に国内の同業界だけでなく異業界、さらには海外からも類似サービスが参入してくる時代には、これまで以上に「商売相手(見込み顧客)は誰なのか」「その人たちはいったいどんな課題があり、どんな障壁があって自社の商材を購入する(しない)のか」を知ることは、非常に重要となります。
そこを明確にすることで、戦略立案と実行において、無駄な工数やコストを抑制し、効率的な施策が可能になるのです。
<ペルソナ+カスタマージャーニー策定のメリット>
①「見込み顧客」イメージが統一でき、行動目標が立てやすくなる
自社の組織が大きくなると、所属部署によって顧客との接点が異なり、想定している「見込み顧客」像が実はバラバラなイメージのまま、というのはめずらしくありません。小規模の組織でも、営業個々人の思い描く「見込み顧客」像は意外と異なるものです。
これを一度出し合ってまとめる、言語化する、可視化することで、それぞれの役割や行動目標が明確になり、目標達成のための行動が効率化されます。
②マーケティング施策の”どこから””何をやればよいのか”がわかる
自社にとっての「見込み顧客」像が明確になると、その人の課題は何で、なにを懸念していて、どんな情報が欲しいのか、がわかってきます。その中で現状、特にどこが弱くて、どこを補強すべきか、どの準場でやるべきか、がわかるので、むやみやたらな施策を実施してリソースが不足したり、想定より予算がかかったのに結果が出ない、といったムダを省くことにつながります。
③カスタマーファーストが実現しやすくなる
「お客様第一主義」で商売をしているつもりが、いつの間にか自社の都合で不便を強いていたり、ムダに対応時間がかかっていたり、機能が不足していたり、結果として競合に勝てない、といった事態を防ぐことにもつながります。結果として業務改善や、新商品開発にも役立ちます。
■BtoBにおける「ペルソナ」策定のポイント
一般的にいわれる「ペルソナ」は、
年齢、性別、居住地、職業、役職、年収、趣味、特技、価値観、家族構成、生い立ち、休日の過ごし方、ライフスタイル……などリアリティのある詳細な情報を設定
とされます。BtoBにおいては、少し違います。まず、大きく
- 企業の情報
- 組織の情報
- 担当者の情報
という括りから始めます。複数の業界を想定する場合は、複数の企業ごとに作成する必要があります。なぜなら、業界が異なると商流も意思決定のプロセスも、その際に参考にするメディアも異なるからです。
その上で、
- 企業の情報:業界は?組織規模は?企業としての課題は?
- 組織の情報:企業内での役割は?組織としてのミッションは? 検討のきっかけは? 改善したいことは?
ときて、ようやくその組織に所属する
- 担当者の情報:役職、年齢層、与えられているミッション、普段見ている情報源、タイミング
と絞り込んでいくのです。
まずは実際に自社の商材を探す、検討するレベルの人をイメージしましょう。意思決定者を想定してしまうと、その後のマーケティング戦略が立てにくくなってしまいます。
■「カスタマージャーニー」の作り方
ペルソナが固まったら、その人が自社商材を探す、見つける、比較検討する、問い合わせする、商談する、上申する、といった一連の流れを表にしてみます。これが「カスタマージャーニー」です。
ここでのポイントは、「その人はどの段階でどんな情報を求めるか」を把握することにありますので、それがわかるレベルまでブレイクダウンすることです。
①購買プロセスをシンプルにまとめる
②その購買プロセスごとに、その際の「目的」「行動」「参照媒体」「思考や感情」などをまとめます。
③その際に障壁となる事項=自社が提供できていない情報 を考えます。
当然、これらを1人でまとめるには想像だけでは限界があります。実際の既存顧客の複数社にインタビューするのが一番良いのですが、なかなか難しいと思います。最低限、社内で顧客接点を持つ複数の部署(営業部と運用部とか)の、意見を言ってくれそうな人、比較的新規が獲得できている人、などを巻き込んでヒアリングして、まとめることが重要です。
それらの要点が集まったら、頑張って一枚の「マップ」にまとめましょう。「一枚絵」にすることが重要です。複雑でわかりづらかった見込み顧客の行動動線がシンプルに理解できるとともに、個別や局所的ではなく、総体的に全体最適でどこから何をやるべきか、が考えられるようになります。
▼BtoB企業の「ペルソナ」+「カスタマージャーニー」の例
■最後に
- BtoBにおける「ペルソナ」はあまり絞り込み過ぎる必要はありませんが、ぼんやりさせたままではいけません。営業メンバーの誰が見ても、「自分のお客さまでいうとこの人みたいな人のことか」とイメージできるレベルにする必要があります。
- 「カスタマージャーニー」は、ある程度は想像で補えますが、細かい箇所はヒアリングが必要になります。既存顧客へのヒアリングが難しい場合は、社内で協力を仰ぎましょう。
- そして、完成した「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」は、社内に広く共有しましょう。
非常に手間がかかる作業ではありますが、この「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」なしでのマーケティング施策立案は、海路図がないままに船出するようなものです。後々、さまざまな課題が発生してしまいます。
そして、「ペルソナ」と「カスタマージャーニー」の作成は、マーケティング施策立案、新規顧客開拓による売上向上という”目的”のための”手段”です。作成が目的になっては本末転倒です。
繰り返しになりますが、せっかく作成するのであれば、一人よがり、他人事にならないためにも、顧客接点を持つ社内のあらゆる部署から、特に影響力のあるキーマンを選抜して、ヒアリングに協力してもらい、「みんなで作る」ことが重要です。
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