全国各地で非常事態宣言の終結も始まり、ようやく出口が見えて来た感がありますが、皆様のお仕事はいかがですか?
私は外資、ベンチャー、レガシー日本企業、大企業から中堅中小、個人事業主までバラエティに富んだクライアント、パートナーと仕事をしているため、その「違い」について、改めていろいろと気づかされることが多かった貴重な期間でした。
前回に続いて、今回はこの「外出自粛期間」を振り返り、そこで気がついた「コロナ後の世界で会社にとって本当に必要なこととは?」をまとめてみます。
まずは、この2ヶ月間の動きを振り返ります
●事例取材がストップ、Webプロモーション案件が急増
私のクライアントはIT企業が8割近くを締めています。
4月7日の非常事態宣言の発出を受け、まっさきにストップしたのが導入事例などのインタビュー取材仕事でした。
新年度スタートの時期でもあり、地方も含め10数件の取材が予定されていましたが、「この時期に移動と対面を伴う取材はさすがに…」という事で軒並み、延期に。
その代わり、各社から「テレワーク導入」など、市場で緊急ニーズが高まるソリューションのマーケティングコンテンツ制作相談が激増しました。
キャンペーンWebページ、メルマガ、ブログなどのコンテンツ整備。
対面での営業に加えて、リード獲得のための展示会出展も中止になり、メルマガからLP、キャンペーンWeb、ブログへの動線を強化して問い合わせにつなげたい、という動きです。
この1.5ヶ月で何本の原稿とワイヤフレーム(Web構成案)を切ったのか、もはや把握しきれませんが、軽く30本は超えていると思います。
●いつも以上に速い外資&ベンチャー、戸惑うレガシー日本企業
こうした「いきなり強制的にテレワーク」になっても、機動力がまるで落ちないのが外資系とベンチャー企業のクライアントです。
もともと出張や海外本社とのやりとりで在宅勤務、リモートワークが多い彼らは、会社に誰も出社できない状況でも普段と変わらず、というよりこの緊急事態を受けて通常以上のスピードで、タスクを処理していきます。
対するレガシー日本企業は、軒並み検討がストップ。
慣れないテレワークに戸惑い、奥ゆかしい国民性からか離れたメンバーとの意思疎通に苦労し、いつも以上に意思決定が遅れている印象を受けました。
●Webによる遠隔取材がスタート
そうこうしているうちに、いくつかのクライアントでは、インタビュー取材を遠隔でやれないか、という動きが出始めました。
Cisco WebexやZOOM、Microsoft Teamsなどを用いて、非対面で画面越しにインタビューする取材です。
実は私はこの事態になる前から、この手の遠隔取材は何度も経験しているので問題ないのですが、依頼元や先方のお客様側は当然、慣れない方も多く、何をどう準備したら?といった相談ごとや、遠くに置いたパソコンのスピーカー+マスク姿で話されてまるで聞き取れないとか、いろいろと苦労しました。
先方にも集合ではなく個別にオンラインに参加してもらい、各自がマイク付きイヤホンで話してもらえたら、遠隔取材でも何の問題もないのですが…。
●日本企業も再起動
そして5月に入り、少しづつレガシー日本企業のクライアントも、動きが活発になりました。
対面での打ち合わせは叶いませんが、皆さんWeb会議にも慣れて来られて、社内のコミュニケーションも取れ始め、順調にタスクが回るようになって来ました。
感覚的に、テレワークが軌道に乗るまでの外資、ベンチャーとレガシー日本企業のタイムラグは、1ヶ月くらいあった気がします。
要は「慣れ」の問題です。
コロナ後を考えても、もはや「テレワークに対応できるかどうか」が、ビジネスの生き残りの条件な気がしてなりません。
●テレワークはチャットしないと回らない
私は以前からですが、今回、クライアントやパートナーも軒並み、在宅&テレワークに変わりました。
その結果、打ち合わせや取材のための移動時間がなくなる事で、私の仕事は以前よりも大幅に効率化しました。
そして改めて、テレワークとチャットツールはセットでやるべきです。
遠隔でのコミュニケーションで相手の状況がわからない、やりとりに時間がかかる、いつ返事が来るかわからないという電話やメールは、ホントに非効率です。
なぜ外資&ベンチャーはテレワークでも機動力が落ちないのか?
ここからが本題です。
外資、ベンチャーはなぜ、レガシー日本企業に比べてこの非常事態でも機動力が落ちなかったのか?
多くの人は、ツールがあるかないか、の問題だと勘違いしています。
もちろんツール整備の遅れは深刻な問題ですが、だったらツールを入れたら解決するのか?という点を、まだ誰も考えられていない気がしてなりません。
コロナ終結後に少しづつ明らかになると思いますが、テレワークの環境が整った上で、以前より業績が向上する企業と、悪化する企業が鮮明になるでしょう。
ズバリ、その違いは「会社としてのビジョンと、各人の仕事におけるタスクが明確かどうか」にあります。
外資系、ベンチャー企業の多くは、ココが明確です。成果主義を取り入れている事もあり、すべてのタスクは数値など定量、定性的に評価されます。
さらにはすべての仕事における行動の裏に、会社としてのビジョン、ミッションが明確に紐づいています。
例えばAmazon。彼らは「地球上で一番顧客を大切にする」というビジョンがあり、社内でサービスや価格を決定する際に、なによりもそれが優先されます。
外資やベンチャーにはいずれもこういったシンプルなビジョンが行動目標にあり、テレワークに慣れており、さらには業績がシビアに評価される(成果主義)ので、社員同士でたらい回しとか、なすりつけ合いなどか起こりにくいし、バラバラで働いていても一つの目標に向かって進んでいけるのです。
一方、レガシー日本企業はどうか、というと、何となく同じ場所で、バラバラな業務を、それぞれのやり方でやるのが一般的。会社の理念とかは一応あるものの、それはホームページや社長室に掲げてあるだけで、社員一人一人の行動にまで紐付けられていません。
テレワーク導入を先送りにしていたため不慣れで、人事査定や評価も社内の「好み」に左右され、市場価値と紐付けて行われている企業はごく僅かです。
これは特に大企業だけに限らず、中小企業の方が顕著です。
中小のレガシー企業の多くは、乱暴に言えば「顧客からの要求に応えるのが仕事」と認識されているので、その顧客の動きがストップしたら、一緒にストップしてしまう。
さらには、離れたお互いが何してるのかを「伝え合う」文化もない。
これまではずっと近くにいて、「なんとなく察し合う」文化のため、自ら進捗を発信したり、積極的に問い合わせすることに「遠慮」があります。
これらが絡み合って、全社で在宅勤務、テレワークという異常事態にまるで対応できなかった、というのが、外部から客観的に見た感想です。
「コロナ後」の新・仕事様式
なにやら、テレワークツールと称して「上司が部下をフルタイムで監視するソリューション」なんてものまであるようですが…これは「テレワークにしたら、社員はサボるに違いない」としか考えられない発想です。
また、「在宅勤務ではマネジメントができない」「同じオフィスで会わないと社員の帰属意識が薄れる」として、「一刻も早く元に戻そう」いう声もよく耳にします。
これらの原因は社員にあるのではなく、日頃から会社として明確な方向性を示さず、上司も五月雨な作業指示をするだけで、「社員の行動を監視すること=マネジメント」だったからです。それでは、社員は自ら離れた上司に報告、連絡、相談する気が起こりません。社員はそれをしても無意味だ、とわかっているので、やらないだけ。テレワークだから、ではなくテレワークでそれが強めに現れただけです。
これらは、テレワークや在宅勤務を「やむおえず出社できない人の特例」としか捉えず、これからの新しい働き方へ積極的にアップデートしてこなかった”ツケ”です。
これから先、「会社に集まる」のではなく「どこでも社員が仕事できて、マネジメントできる」ようにしなければ事業は継続できません。そしてそのためにはツールを使うだけではなく、会社としてのビジョン(方向性)を明確にし、業務とタスク、そして評価を見える化していく必要があります。
前回も書きましたが、コロナ収束後、仕事のやり方を「元に戻そう」としてはなりません。
このピンチをチャンスと捉えて、長年、前に進めなかった、本当の意味での「働き方改革」を実施しましょう。
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