今回は少し切り口を変えて、営業目線で「なぜ新規開拓がうまくいかないのか?」「どうやればうまくいくのか?」を、考えていきます。
フツーの日本企業、BtoBの売上構成では、既存顧客からの売上がほとんど、というところが多いと思います。
しかし、市場競争の激化や、不景気による顧客の予算減少の影響などで、既存顧客への売上だけでは成長は見込めなくなってきています。
そうなると「新規顧客開拓」に着手する必要に迫られるワケですが、フツーのBtoB日本企業でコレがうまくいっている、という方がめずらしいのが実態です。
■「なぜ新規営業がうまくいかないのか?」
× 新規顧客開拓のやり方が分からない
× 既存顧客対応が忙しくて時間がとれない
× ゼロからテレアポして開拓するのはムダが多く、どうしてもやる気が起こらない
といったところが、営業部内の”ホンネ”だと思います。(なかなかそうハッキリ言えませんが)
フツーのBtoB日本企業では長年、既存顧客への対応と、既存のお客さまから紹介していただいた新規顧客への営業活動だけでも、それなりの結果が残せました。
そのため、いきなり「新規!」と言われても、どこから手をつけてよいのかまったく分からない、ということも決して珍しくありません。
それは現場の営業メンバーだけでなく、マネージャークラスも同様で、そのため「上司もやり方がわからず、やったこともないのに、なんで自分だけそんな苦労をしないといけないのだ」と、結果、後回しにしてしまったり、誰もやりたがらない状況になっている、というのが現実です。
また、既存顧客も決して安泰ではなくきちんと対応しなければ売上が減少してしまうため、「関係を密にして売上を回復しよう」とこれまでより多くの時間を費やすことになり、結果「やっぱり新規顧客開拓にかける時間がとれない・・・」というのも、非常に多いシチュエーションです。
しかし、販売する製品やサービスにもよりますが、どう言い訳しても、既存顧客だけでは売上は減少します。
売上を拡大していくためには、どうしても新規顧客を開拓していかないとならないのです。
これまで、既存顧客のフォローに加え、新規顧客を開拓するのは営業の役割でした。
しかし、前回お話したように顧客側の動きや心理が変わりました。
売り込み電話をかけてきて、面会を迫られても、顧客側は「ウザい、アヤシイ」としか感じません。
顧客は「製品やサービスを探すときはインターネットでやるからいいよ」「用があればこっちから問い合わせするよ」と考えています。
こういった顧客側の心理に応え、Webサイトで最適な情報公開を行い、見込み顧客からの問い合わせを元に対応するのが「インバウンドセールス」という活動です。
それに対し、テレアポでこちらからアプローチする従来型の営業手法が「アウトバウンドセールス」となります。
03でもご紹介した顧客側の変化に伴い、従来型アウトバウンドセールスの効果が薄くなり、それでは思うように商談獲得ができなくなったため、各社はいま、「インバウンドセールス」の確立を目指して活動しているのです。
要するに、新規顧客、見込み案件を創出するのは今や、営業ではなく「マーケティング」の役割に変わったのです。
「そのために(マーケティングとして)何をやらないといけないのか」はまた改めて説明するとして、今回は、営業部門で新規顧客を獲得できるようにするには?について考えてみます。
■やるべきこと~新規顧客開拓できる「仕組み」作り
新規開拓を営業スタッフ個人に任せていては、「やり方がわからない」「時間が取れない」は永遠に解決できません。
既存のフォローは外して新規獲得の専門組織を作るのがベストですが、リソースの兼ね合いでなかなかいきなりそこまでは難しい、というのが現実だと思います。
その場合は、属人的な営業の手法を見える化、共有するところから始めてみます。具体的には、
①テレアポ時のトークスクリプト確立、スキル平準化
②資料送付DMの活用
③メルマガによる定期的な情報提供
④商談時用のセールス資料の整備
となります。
①テレアポ時のトークスクリプト確立、スキル平準化
前回、「テレポはもう時代遅れ」とは言いましたが、現実的にすぐ始められる営業活動としては外せません。
その際、営業なら誰でも同じレベルの説明ができるかというと、そんなことはありません。誰しも得手不得手がありますし、相手は初めて接する顧客です。うまく話せる方がめずらしいのです。
まずは社内の売上成績上位の営業担当者の意見を参考に、自社の主力商材のトークスクリプト (テレアポ時の台本) をまとめてみましょう。
そうすることで、
・自社の強みは何なのか?
・自社の商材の中で、顧客のニーズが高く、アポが取りやすいものはどれか?
など、さまざまなことが明るみに出てきます。
よく売れる営業スタッフはそれらをなんとなく把握するのがうまく、そうではないメンバーはそこがわからずに悩んでいるものです。
少し手間がかかりますが、このト-クスクリプト(標準的な営業台本)を作ることで、キャリアの浅い営業スタッフでも「なにをどう話したら・・・?」という不安が解消され、テレアポの活動量が増えていきます。
そして作って終わりではなく、定期的にテレアポ現場からの声を参考に内容の見直し、更新も図ります。
「よくある質問とその切り返し方」などが充実してくると、さらに精度が高まります。
また基本的な事ですが、最新のトークスクリプトは共有データ化して、誰でもどこからでも、常に「見える化」しておくことも重要です。
②資料送付DMの活用
テレアポ時の問題は大きく2つです。
×受付が突破できない
×アポにつながらない
それによく効く手法として、「事前にDM(ダイレクトメール)を送る」というものがあります。
イマドキ、ダイレクトメール??と思うでしょうが、デジタル全盛の時代だからこそ、逆に効果ありなのです。
ダイレクトに資料が届くのでeメールに比べ目につきやすく、テレアポして受付の人に「ご用件は?」と聞かれた際に、「先日お送りした資料についてご説明したく・・・」と言えば、まずガチャ切りはされません。
「何を送ればいいの?」となりますが、売り込みたい商材やサービスを簡潔にまとめたもの、直近のセミナーや展示会のご案内など、アイデア次第でなにかしら用意できるハズです。
DMを先にお送りしておくことで、ある程度、認知、理解していただいたところからお話ができるメリットもあります。
ほとんどの場合は「あぁまだちゃんと見てません」ですが、それでも手元にある資料を元に説明できることでわかりやすく、ニーズの有無も明確に把握できます。
過去に名刺交換だけしていて、商談まではいっていない、という休眠顧客リストが社内に存在するのであれば、資料作成、印刷と郵送コストはかかりますが、むやみやたらなテレアポに比べ効果は高いですから検討しましょう。
DM送付状況やフォローコール状況など、SFA・CRM (営業支援・顧客管理システム) を使って一元的管理しましょう。
③メルマガによる定期的な情報提供
こちらも王道ですが、メルマガをフックにテレアポする方法です。
配信先は、名刺交換程度で受注につながっていない顧客リストなどを使います。
②のDMに比べ、印刷と郵送コストもかかりません。
改めて詳しく説明しますが、メルマガ配信時にMA(マーケティングオートメーション)ツールを使うと、
・メルマガの開封率
・誰が興味を持ってくれているのか
(自社Webサイトにメルマガ経由でどれくらい見に来てくれたのか:回帰率)
などが把握でき、その後のフォローにかなり有効です。
ただし、メルマガに関してはできるだけ、継続して配信することが重要です。
BtoBでは一度でズバリのタイミングにあたることは難しく、顧客の予算状況やニーズにより興味関心のタイミングが異なるため、一回配信しただけでは、案件化は至難の業です。
これまたなかなかネタがない、続けられるか不安、という課題が生まれますが、なんらかキャンペーンでも、新サービス発売、でも、展示会やセミナー出展のお知らせ、でもネタを見つけて定期的に送付していくことを検討しましょう。
④商談時用のセールス資料の整備
営業スタッフが商談時に使う資料は整っているでしょうか?
自社開発商材やサービスを扱う企業はまだしも、販売代理をメインにしている企業ではメーカー製のパンフレットやチラシにハンコをついて持参するのみ、になっているケースがほとんどです。
それでは、「その商材をなぜオタクから買わないといけないの?」が説明できません。
既存ではなく新規顧客開拓の場合、「自社の強み」をしっかりまとめた資料を持参しなければ、まずまちがいなく初回訪問のみで終わります。
BtoB商談ではいきなり決裁者に合えることは稀ですので、仮に商談で製品やサービスを気に入っていただけた場合でも、担当者経由で取引したい旨を稟議、上申いただく必要があります。
そのためにはしっかりした営業資料の整備は非常に重要なのです。
<整備したい営業資料(コンテンツ)>
●会社紹介:
「企業概要」だけではなく「提供サービス総覧」「取引業界」「取引実績」「企業理念やビジョン」などを明記
●製品/サービス パンフレット、リーフレット:
機能だけではなくお客様側の課題をどう解決するか、というソリューション目線のもの
●提案資料(PPT):
さらに詳細な、稟議書に添付できるレベルの競合比較やベネフィット、アフターケアについても解説したもの
これらは最低限、個人任せにせず企業としてしっかり整備することをおススメします。
また、複雑な操作や、デモが簡単にお見せできないような商材の場合は、
●ビデオ:
概念紹介、利用イメージ、デモ
なども、効果を発揮します。
これらの資料(コンテンツ)が整備されていないと、仮にアポが取得できたとしても、その後の「勝率」が営業スタッフのスキルに依存してしまうことになってしまいます。
ここまで、新規顧客開拓できる「仕組み」作りとして
①テレアポ時のトークスクリプト確立、スキル平準化
②資料送付DMの活用
③メルマガによる定期的な情報提供
④商談時用のセールス資料の整備
を解説しました。
さらに、「働き方改革」的な目線では、
・営業スタッフの機動力を向上するために直行直帰を推奨
・商談報告の見える化、リアルタイム化
・社外からの安全な社内資料へのアクセス
といった仕組みも、同時に実施する必要があります。
そして、最後の「新規顧客獲得」成功のヒケツは、
前述の①~④の業務を専門に行う内勤の担当者を立てる
というものです。
これら①~④を外出の多い営業スタッフに任せるのは非常に負担が高く、「既存顧客の対応」を理由に後回し、放置される可能性が高いものです。
それを防ぐには、専門のスタッフを立てるのが最も確実です。
そしてそれこそが、実はBtoB企業における「マーケティング担当者」であり、近年注目される「インサイドセールス」というものです(これについては別項で解説しています)。
次回、05ではBtoBマーケティング施策の第一歩、「企業のWebサイトで発信すべき情報とは?」について解説します。
いますぐ、BtoBマーケティングについての課題解決について相談したい、
という方は下記までお問い合わせ下さい。
www.red-cm.com
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