前回に続き、BtoB企業のための「オウンドメディア(ブログ)」のはじめ方を解説します。
昨年、とある取引先企業から
”「オウンドメディア(Blog)」を開始するにあたり、社内向けのガイドラインと研修を実施したい”
というご相談があり、実施しました。
実施内容は、下記の通りです。
①オウンドメディア運用「ポリシー」(社外向け)と「ガイドライン」(社員向け)
②オウンドメディア「ガイドライン」トレーニング ビデオ コンテンツ+オンライン テスト制作
今回はその経験をもとに、企業がオウンドメディア(Blog)を開始するにあたって実施すべきこと、注意すべきポイントをご紹介します。
オウンドメディア(Blog)を始める際の不安
コーポレートサイトでの情報発信や広告(ペイドメディア)に比べ、オウンドメディア(Blog)での情報発信はもっと気軽に、ライトに、親しみやすく行える点がメリットです。
>BtoBオウンドメディアのポジショニングと役割についてはコチラ
とはいうものの、企業活動の一環なだけに「なんでもアリ」ではありません。
また、発信者が社員という個人なだけに、微妙な線引きも発生します。
そもそも、新しいメディアを運用するとなると、誰が責任を持つのか、もし、何かトラブルが起きたときにどう対応するのか、など考えだしたら不安なことがいろいろとあります。
そのために策定するのが、「ガイドライン」と「ポリシー」です。
「ガイドライン」と「ポリシー」の違い
「ガイドライン」は社内向け。社員に対して、行動規範を示すものです。
「ポリシー」は社外向け。告知する役割を持ちます。
このうち、「ポリシー」は社外に対して公開されていますので、検索すればWebサイトで見ることができます。
各社のオウンドメディアポリシーの例
- ソフトバンク(サイトポリシー内に「ソーシャルについて」で言及)
https://www.softbank.jp/help/sitepolicy/ - 資生堂
https://www.shiseidogroup.jp/smp/ - 船井総研
http://www.funaisoken.co.jp/socialpolicy.html - 富士フイルム
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/aboutus/socialmedia/policy/index.html - 日本IBM
https://www.ibm.com/blogs/think/jp-ja/social-computing-guideline/
このように多くの企業では、「オウンドメディア(Blog)」に留まらず、TwitterやFacebook、InstagramやLINEなどSNSの公式アカウントについても含めて言及しています。
*今回はSNS利用については除き、オウンドメディア(Blog)に絞って説明しています。
なんのための「ポリシー」「ガイドライン」なのか?
各社の公開されている「ポリシー」は、ボリュームの大小はありますが、書かれていることはごく当たり前の内容であり、いたってシンプルです。
何のためにわざわざ公開しているのか、といえば、ソーシャルメディアは従来の情報発信とは性格が異なるため、新たなルール策定が必要だから、ということに尽きます。
もう一つ、重要なポイントは「炎上対策」です。BtoB企業のオウンドメディア(Blog)の場合、炎上するリスクは決して高くはありませんが、それでも取引先やパートナー企業から「機密情報の漏洩」や「名誉棄損」といったクレームが届く可能性はゼロではありません。
これまでは企業が対外的に情報を発信する手段は「広告」か、プレスリリースなどの「広報」、もしくはコーポレートWebサイトでした。その場合は、広報やマーケティングといった専門部署がルールを設けて対応してきました。
しかし、オウンドメディア(Blog)は企業の名のもとに、社員個人が情報を発信します。情報を受け取る方々も企業に所属する個人です。そもそもが新しいメディア故に慣れていない人同士がやりとりするため、ルールを明確にしておく必要があるのです。
「ポリシー」「ガイドライン」策定時に留意すべきこと
オウンドメディア(Blog)という新たな手法を用いて、新たな顧客接点を創り、そこで「繋がり」を行うのに、従来型の考え方では思うように活動できません。安全を優先するあまりにガチガチのルールを策定してしまっては元も子もありません。
基本的な考え方として、「新たなメディアを活用して新たな営業活動を実施するため」に、やるべきこと、やるべきでないことを明確にわかりやすく示し、社員と受け取り手であるお客様、パートナー企業の方々が安心して活用できるための道筋を示す、という本質を忘れないようにしましょう。
①「ポリシー」と「ガイドライン」は「行動規範」がベースとなる
企業において、Webだけに留まらない社員としての「行動規範」がベースになります。また「個人情報の取り扱い」や「サイトポリシー」などとも整合性をとる必要性があります。
そうした規範、ポリシーが明確でない場合は、まずはそちらを明確に定める必要があります。
②「ポリシー」に記載すべきは「自覚(責任)」「心構え」「遵守すべきこと」「ご利用の皆様へ」
ポリシーは「原則」的にシンプルでなければなりません。
オウンドメディア(Blog)を実施する上での、
- 「情報が企業名と共に世界中に発信される」「一度公開したら完全には消去できない」といった自覚と責任
- 「他者尊重」など情報発信における心構え
- 「著作・肖像・名誉」など各種法令の遵守
- 「個人の情報は会社としての公式見解ではない」といった利用される方々への免責事項
などを記載します。
③「ガイドライン」は具体的に、実施可能なルールを記載
そもそもオウンドメディア(Blog)は即時的で活発な情報発信のためのメディアです。「掲載するコンテンツは二重三重のチェックを経て公開する」「コンテンツは常時監視する」など、実現不能なルールを載せても意味がありません。「万が一、誤った情報発信をして指摘があった場合に、どのようなフローで社内のどの部署に共有し、誰がどのように訂正を行うのか」といった現実的で具体的な取り決めを行うことが重要です。
④「ガイドライン」にはコンテンツ制作者としての基本知識も記載
オウンドメディア(Blog)を実際に書く社員向けには、文章を書く上で配慮すべき点や、引用についての出典の明示、掲載画像の著作権について、さらには文字校正の実施方法など、コンテンツを制作するスタッフとしての基本的な知識も必要となります。
⑤策定後のセミナーとトレーニングが重要
言語化し、文章として策定した「ポリシー」と「ガイドライン」はいつでも社員が確認できる場所に掲載する、ということが大切ですが、掲載すれば終わりではありません。それを実際に携わる社員に対してレクチャーするセミナー、トレーニングを開催しましょう。このセミナーはビデオ化しアーカイブしておけば、後に社員スタッフが追加される際の負荷軽減につながります。
いかがでしょうか。面倒だなぁ、大変だなぁ、と感じるかもしれませんが、「気軽に発信できる」一方で思わぬトラブルが起きるリスクもある、ということを認識して、事前にきちんと基本姿勢、心構え、運用ルールなどを明確にしておきましょう。
そして、そのルールと手順を社内、関係者全体が理解するまでがゴールです。
オウンドメディア(Blog)の立ち上げ、ポリシーやガイドライン策定でお悩みでしたら、ぜひお気軽に、お声がけください。
次回③では、オウンドメディアの記事執筆に関するアイデアの出し方を解説します。
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